東北の震災の日
私はバングラデシュにいました。
バングラデシュの大学や医療機関で
講義や研修を行うために数ヶ月滞在中だったのです。

震災の知らせを受けテレビをつけました。
外国のテレビには、日本国内と違い
全てがリアルに放映されていました。

私は即座に飛行機を予約し
日本にもどり、家族の安全を確かめ、
すぐに被災地に入る段取りを始めました。

たとえ、災害看護の経験者でも
個人では限界があり、現地で足手まといになる可能性があるので

大きな団体とのマッチングを待ち
その間に現地に持っていく医薬品などの
物資を集めました。

マッチングはしばらくかかりましたが
ある大きな国際団体と合意し

ボランティアの医療保健専門家として
特に子どもたちの心身に対する緊急援助を
行う役割を与えられました。

岩手県の海沿いに向かうことが
決まりましたが、現地に入る方法がなかったのでキャンピングカーが準備されました。

まだ余震が続き、道路が寸断される中
数人グループで迂回しながら向かい、
ようやく到着すると、遠野の空き家を
お借りして、活動が始まりました。

集まった仲間は皆、
被災地や発展途上国などで
救助活動の実践をしたことがある人たち
でしたが

活動を始めると日に日に無言が増えていきました。

少しの行き違いにも感情的になり
関係性にも余裕がなくなってきました。

なぜなら皆、自然の脅威に圧倒され
ご遺体との対面や行方不明のご家族を探し回る
方々の悲痛な叫びを聴き続ける毎日に

自分たちの無力感、自分など全く役に
たっていないのではないかと自分たちを
責める気持ち、いつ自分たちも
大きな余震に見舞われて死んでしまうのか
との恐れと不安、

反面、たくさんの苦しんでいる被災者に1人でも多く
手を差し伸べたい、との突き動かされる気持ち、複雑な感覚の中で
時が過ぎていきました。

救助活動中は当たり前ながらお風呂には入れません。

しかし、しばらく経つと

唯一、1日の活動の疲れをとる場として
機能が回復した日帰り温泉施設が
自衛隊員と救助活動団体用に
風呂を提供してくださったのです。

その日ははじめての風呂の日でした。

自衛隊員の女性たちと一緒になりました。

脱衣所も風呂場も皆、無言です。シーンとしていました。

皆、疲れていましたが
被災された方々を想うと
弱音を吐くわけにもいきません。

自分たちを鼓舞するためにも
ポジティブな言葉や笑顔も必要だったかも
しれませんが

笑うことはもちろん
たあいのない会話をすることも
自分たちに許すことはできませんでした。

その時
1人の女性自衛隊員の方が、頭を洗いながら
すすり泣いているのがみえました。
声を出さずに泣いていました。

それをみた私も仲間たちも
自分たちが我慢していた感情があふれ
涙をとめることができなくなりました。

皆、黙って泣きました。

つらかったのではなく
それは

亡くなった方々や苦しんでいらっしゃる方々への追悼の
愛がいっぱいこもった涙でした。

祈りながら泣いていたのです。

泣きながら祈っていたのです。

ひとしきり涙の合唱があった後
皆、何ごともなかったように黙ったまま更衣をすませ
自衛隊員の方々も私たちも
また凛々しい顔で持ち場に戻っていきました。

私の忘れられない記憶です。

あれから8年が経ちました。

復興支援への継続と共に
今の私の大きな使命には

あの心優しい自衛隊員の方々を
遠い国の戦争に行かせないことも
加わりました。

災害援助や紛争後の平和維持活動、
あるいは日本国の防衛は大変な仕事ですが
人のいのちを救うから頑張ることができるのではないか、と思います。

他の国に派遣されて
戦争に加担させられた上
いのちを殺すために活動することとは
全く活動の意味も質も違います。

あの美しい涙をみせた隊員の方々も
人を殺す活動を望んでいないことを
私は確信しているのです。

被災地での活動の日々
同じ隊員たちに会うことも
私たちが泣くこともその後はありませんでした。

泣くことも申し訳ない状況が続いたのは
皆さんもご存知の通りです。

8年後の今年

自衛隊が日本以外の国が行う戦争のために
同行し戦争に加わることが合法化されるよう
現政権によって憲法に記されようとしています。

いのちを守るための尊い活動をしてきた自衛隊が
日本以外の国に出向いて
誰かを殺すための自衛隊になるのは阻止したいのです。

この改憲を見過ごせば
自衛隊に、なり手がなくなり
やがて、徴兵制にもつながる一歩にもなりかねないのです。

4月の地方選挙と7月の参議院議員選挙には
(衆参ダブル選挙であっても)
国の安全保障に関する曲がってしまった方向性に
ストップをかける意味合いがあります。

国会議員だけでなく地方議員も
選挙を通じて党の方針を訴え
自らの政治家としての政策信条を
訴えることができますし

市民の生活や暮らしを守るために
戦争に巻き込まれたくない!という
意思表示を国に示す活動が
出来ます。

この記事を読んでくださった皆さん

皆さんの大事な人たちや
未来の日本の子どもたち

そして
私たちを守るため最前線にいる
自衛隊の皆さんの
大切ないのちを

一緒に守るために
立ち上がっていただけませんか。

投票行動を通して。

私と一緒に選挙活動を通して。

私たちの使命として。

2019年3月11日
斉藤あつこ

注:写真はイメージです。